Be AHEAD  01 大谷大学編 問いの先へ! Be AHEADとは AHEAD JAPANの理念とともに、障害学生支援を一歩先へ進めるために、高等教育機関の現場から生まれた創意ある取り組みやグッドプラクティスを発信します。 大谷大学 大谷大学は、仏教精神を基盤に、自分の生き方を尋ねていく大学です。様々な問題が次々に起こってくる社会の中にあって、本当に大事なことは何なのかを見定め、確かな歩みを進めていく人を生み出すことを願いとしています。知識や技術だけでなく、社会で人と向き合い歩む力を養うことを大切にし、教職員と学生が互いに支え合う風土の中で挑戦を後押ししています。 〔写真説明〕表紙は大谷大学尋源館の外観の写真。 〔本文 開始〕 01みんなで学生を育てるという発想 「この学生さん、入学した頃は……」そんな会話が支援の積み重ねを物語る。大谷大学の障害学生支援Be AHEAD  01 大谷大学編 問いの先へ! Be AHEADとは AHEAD JAPANの理念とともに、障害学生支援を一歩先へ進めるために、高等教育機関の現場から生まれた創意ある取り組みやグッドプラクティスを発信します。 大谷大学 大谷大学は、仏教精神を基盤に、自分の生き方を尋ねていく大学です。様々な問題が次々に起こってくる社会の中にあって、本当に大事なことは何なのかを見定め、確かな歩みを進めていく人を生み出すことを願いとしています。知識や技術だけでなく、社会で人と向き合い歩む力を養うことを大切にし、教職員と学生が互いに支え合う風土の中で挑戦を後押ししています。 〔写真説明〕表紙は大谷大学尋源館の外観の写真。 〔本文 開始〕 01みんなで学生を育てるという発想 「この学生さん、入学した頃は……」そんな会話が支援の積み重ねを物語る。大谷大学の障害学生支援は、複数の職員がそれぞれの立場から学生を見守り、意見を交わし、必要な支援を組み合わせる『チーム支援』が基本だ。理念の中心にあるのは、自立(律)支援であり、「学生生活の中でどのように成長してほしいのか、社会に出た後にどのような姿であってほしいのか」という問いを出発点としている。新たな挑戦を促し、失敗から学ぶ経験を支えることも重視している。学生が安心して試行錯誤できる環境を整えることが、成長には欠かせない。これは障害学生に限ったことではない。支援の目的は、できないことを補うのではない。『どうすればいいのか、どうできるのか』をそれぞれの視点で実践する。そのために、入学前の面談から卒業後の進路までを見通す縦断的な視点と、多部署が連携する横断的な体制が整えられている。 〔写真説明〕2ページ目の上部に大谷大学の校舎の写真。 02これが大谷流、チーム支援! 障害学生支援においては、入試は入学センター、修学は教務課、学生生活は学生支援課、就労はキャリアセンター、さらに図書・博物館課、教育研究支援課、総務課など、大学の各部署がそれぞれの役割を当たり前のように担っている。本来であれば、障害の有無にかかわらず『当たり前』に行われるはずのことだが、実際の支援現場でこれを実現するのは決して容易ではない。 しかし、大谷大学では、各課の担当者が集まり『障がい学生支援チーム(横断型)』を組織し、この当たり前を仕組みとして形にしてきた。横断型のチーム体制こそが同大学の大きな特長であり、入学前から卒業後まで切れ目のない支援を可能にしている。 もっとも、この体制は最初からあったわけではない。「障害学生支援って大変…」という負のスパイラルをどこかで止めなければ…という認識が広がっていた時期、障害学生支援のセンターを設置したらどうかという意見もあった。ところが、管理職職員は、他大学事例を参考にしながらも、箱を作ったらそれで終わりになるのではないかと懸念し、大谷大学の風土や文化、タイミングを見極める中で、大谷大学に合うスタイルは何かを考え、大学規程にある横断型チームの仕組みに目を付けたのである。各部署から担当者を招集することで、大学図書館やキャリアセンターといった、いずれ利用する場所も早い段階から関わるようになり、教務課だけでなく部署を超えてみんなで学生を支援する体制が形づくられた。特筆すべきは、この支援体制にキャリアセンターが常時加わっていることだ。修学上の課題と並行してキャリア形成の視点が加わることで、学びから就労への橋渡しが同じ枠組みの中で進められる。この連続性は、特に障害のある学生にとって大きな安心感となっているだろう。 さらに、この横断型チーム体制を後押ししたのが、学生支援課(保健室)に新たに採用された職員である。養護教諭や予防保健に関わる行政職の経験をもち、連携支援を当たり前としてきたその視点が、どのように各部署を巻き込み、支援を推し進めていけるか、を具体的に示すこととなった。現在この職員は、学生支援課(保健室)所属のコーディネーターとして、現場に足を運びながら必要な人や部署をつなぐハブの役割を果たしている。 さらに、チームを裏から支えてきた管理職職員の存在も欠かせない。障害学生支援に関する事務を取りまとめ、学内全体を俯瞰しながら、必要に応じて関係部署や教員に声をかけ、方向性を整えるための事前調整を担っている。現場担当のコーディネーターと学内事務に通じた管理職職員。この二人のコンビネーションが、チーム全体を支える屋台骨となっている。 〔写真説明〕3ページ目の上部に障害学生支援チームの体制図と説明動画、下部に障害学生支援の管理職職員とコーディネーターの写真。 03起動力から、機動力・持続力へ! 障害学生支援を担うのは、特定の担当職員や一部の部署だけではない。職員に加えて教員も含め、大学全体として取り組むことが、大谷大学の支援のあり方を形づくっている。障害学生支援を行う上では、実務レベルで即時的に判断して行う必要性があるものだけでなく、教員を含めた委員会での検討を介して大学としての見解を示すべきものもある。事務局中心の小回りの利く体制と、教職員協働での体制―スピード感を持ちながら運営していくための組織決定のあり方にも、大谷スタイルが見られる。 04会議の現場から見える、チーム支援の『リアル』 定例会議に取材で同席させてもらった。部署や立場の異なる職員同士が、発言しやすい雰囲気の中で率直に意見を交わしていた。 教務課からは「課題の提出が少し滞っているようです」、キャリアセンターからは「面接練習では緊張が強く出ていたため、学外の支援機関を案内しました」、図書・博物館課からは「配架アルバイト勤務は続けていますが、夏休みは体調に配慮して日数を減らす予定です」との発言。こうした小さな報告を一つひとつ積み重ねながら、その場で必要なつながりや対応が決定されていく。やり取りの中で、コーディネーターは「この件は教員にも早めにお伝えしましょう。説明は私がします」と場をまとめる。そのさりげない助言や適切な介入が、会議の流れを生み、次の行動へとつなげていく。 会議では、できていないことだけでなく、できるようになったことにも注目する。入学当初は発言をためらっていた学生が、ゼミでのディスカッションに加わるようになった話や、アルバイト先での業務に慣れ、同僚と自然に会話できるようになった事例など、前向きな変化が共有される。こうした報告は職員同士の士気を高める効果もあるようだ。 守秘義務にも配慮し、必要な情報を必要な範囲で共有する仕組みがあるからこそ、信頼して議論できる。会議後には全員が、この学生に今何が必要かを理解し、共通認識として持ち帰り、それぞれの支援に反映させることができるのだ。 〔写真説明〕4ページ目の下部に障害学生支援チームの定例会の様子、机を囲んで職員が話し合っている写真。 05「分からない」を安心に変える ― 学内外で高める支援力 障害学生支援室がない現場で、どう判断すべきか迷うこともある。そんな時は、まず学生の話をしっかり聴き、関係者と相談する。それでも分からない場合は、外部からの協力も大きな支えになる。支援経験の豊富な大学教員によるスーパービジョンや、学外の相談機関、例えば、京都大学が運営する HEAP(高等教育アクセシビリティプラットフォーム)に相談することもある。「これで大丈夫かな?」と思った時に、すぐ相談できる相手がいること。それが、支援する側の安心感と判断力を支えている。 さらに、支援に携わる教職員の研修も欠かせない。全国の大学関係者が参加するAHEAD JAPAN(全国高等教育障害学生支援協議会) の研修会に、今年は10名程度の職員が参加する。多人数参加により情報や視点が特定の人に偏らず、組織全体の力として蓄積できる。予算確保や業務調整には工夫が必要だが、得た知見は確実に、そして速やかに学内に還元されるであろう。 また、学内でも研修や情報共有の機会を大切にしている。『障がい学生支援チーム』が中心となって配慮事例や制度を紹介し、各担当者が現場での経験や気づきを直接伝え合うことで、この学生には今何が必要か、を素早く共有できる体制が築かれている。もちろん、これは先回りの支援を意味するのではない。学生の意向を起点にして支援が進められていることを補足しておきたい。 06風土を耕す 制度を整えるだけでは、障害学生支援は機能しない。何かあれば相談できるという風土は、コーディネーターが日常的に他部署へ足を運び、顔を合わせてコミュニケーションを重ねる中で育まれている。メールや電話、立ち話も重要なコミュニケーションの場だ。 当初は、障害学生の受け入れは大変という不安が強かった学内にも、チームメンバーの意識、コーディネーターによる調整や後押し、外部からの助言の活用によって、安心感のある環境が根づきつつある。こうした風土づくりがチーム支援の土台となり、大谷大学の障害学生支援を持続可能なものにしている。そして、障害のある学生の学びの機会を保障し、個人の成長を力強く支え続ける取り組みは、大谷大学の障害学生支援の発展を促し、さらには大学全体の教育力と魅力を高める原動力にもなっていくに違いない。 〔写真説明〕5ページ目の真ん中に障害学生支援チーム全員が笑顔で両手のピースサインをしている集合写真。 コラム:持てない自信、募る不安・・・ 横断型チームができる前は、学生支援課と教務課が障害学生支援の実務を担っており、多くの課題を抱えていた。たとえば、情報保障。授業で使用する教科書や手書き資料やイラストなど、担当教員が「伝えたいものだ」というならば、要望に合わせてどうにか点訳したり、作図用紙で触図化していた。学生や担当教員への確認で分かりにくい箇所があれば修正を繰り返し、直前の依頼でもどうにか対応していた。夜遅くまで作業に追われる日も少なくなかった。また、教員からの問い合わせも教務課が全て担っており、学生のためにとは思っていても、対応が過剰になったり、対応者ごとに差が生じてしまうこともあった。学内において障害学生に関する相談も実務も、時には批判も、すべてを受け入れる何でも屋状態になっていた。目の前のことを日々刹那的に取り組む中で、職員の中には「これでよいのか」「どうしたらよいのか」という不安な気持ちが膨らみ、さらに疲弊につながっていった。障害学生との関わりについて、常に自信がないまま考え、手探りで業務に取り組んでいた。気づいたら、少しずつ『学生支援は大変なもの』というマイナスのイメージが形成されつつあった。そのような状況のなかから、横断型チームの歩みが始まったのである。 〔本文 終わり〕 一般社団法人 全国高等教育障害学生支援協議会(AHEAD JAPAN) 高等教育機関における障害学生支援に関する相互の連携・協力 体制を確保するとともに、実践交流を促し、障害学生支援に関する調査・研究及び研修・啓発を行って実務への還元を図り、もって大学における障害学生支援の充実並びに学術研究の発展に寄与することを目的とする事業に取り組む 発行年月 2025年11月 編集後記 Be AHEADの第一弾が、ついに完成しました! 1日の取材を通して、私たち自身も多くを学ぶ機会となりました。 「支援室がなくても支援はできる」そのことを当然の前提として取り組まれている姿勢が、記事から伝われば嬉しいです。 ランチは、美味しいハンバーグを仲良くいただきました。写真もちゃっかり残しました(笑)。 この取組は、高等教育機関の障害学生支援担当者のみならず、教職員や大学執行部の方々、小・中・高等学校などで障害支援に携わる方々、そして当事者や保護者のみなさんにも読んでいただきたいと願っています。 どうぞ、多くの方に届きますように。 〔写真説明〕6ページ目に取材時のランチのハンバーグの写真。 編集後記音声 望月:Be AHEAD第一弾、とうとう作ることができました。(「よっ!」「素晴らしい!」と盛り上がっている歓声)全国の素晴らしい4人の精鋭でやってますので最初に自己紹介します。大阪大学の望月です。 和歌山大学の森です。 佛教大学の楠です。 宮城学院女子大学の蒔苗です。 望月:富士市今回初めてやってみて、皆さんどうやったかなぁっていうの。僕自身は初めてで、手探りながらやっているところがあるから、ほんとに楽しいって感じで作ってるのがみんなに伝わればいいなと思っています。どうですか?森さんは? 森:勉強になりました。こんな体制でっていうのが姿勢とかもな、ほんま伝わってたら嬉しいなぁと思います。皆さん、支援の人の姿勢、当たり前でいいなと思いました。 望月:じゃあ楠さん、大谷大学の素晴らしいところを 楠:そうですね。大谷大学の時に食べたハンバーグがおいしかったですね。 (「美味しかった!」と全員大笑い) 望月:グリル長谷川ね。覚えておいてください笑 蒔苗:ボリューミーでしたね笑 楠:僕自身もね、大谷大学に行って勉強になりました。ぜひ皆さんも読んで欲しいなと思います。 望月:蒔苗さん、どうですか? 蒔苗:はい、そうですね。なんか障害学生支援って部署がなくても当たり前にやっているって言う、あのなんか雰囲気。すごく良かったなぁと思って。部署作んなきゃとか、担当者つけなきゃっていうよりも、まず、大学にあったスタイルは?みたいなのは、すごく考えさせられました。 望月:今言ったこと。僕も全く同じですね。大規模大学でも、大谷大学のような風土が醸成できたらいいなっていうふうに思いつつ。 楠:ああゆう風土っていうのが、大事になるだろうなと思います。 (全員のうなずき) 望月:これが初めてのところなので、どういう方に届くかっていうのが、まだ僕らもわかってないところがあるんですけれど、障害心学生支援に関心がある方だけじゃない形で、こんな大学あるんだ!みたいなことを知ってもらえると、僕らとしては嬉しいなぁというふうに思っています。 森:今回は、蒔苗、森、頑張って書きました! 蒔苗:がんばりました! (みんなで拍手) 森・蒔苗:ありがとうございます! 森:さて次回、、、次回も、、、?!?! 望月・楠:楽しみにしててください!! (みんなで大笑い) 森:第2弾、乞うご期待!! 楠:皆さんの大学に行くかもしれないんで、、 蒔苗:待っててくださーい! 森:はーい! 望月:待っててねー! おわり AHEAD 広報メンバー 佛教大学 楠 敬太 宮城学院女子大学 蒔苗 詩歌 大阪大学 望月 直人 和歌山大学 森 麻友子